当時のメーカー組合の内規、事実上は監督官庁の
規則だったのですが、内規によれば、表示上の
当り確率と実際の当り確率の差は上下10%以内。
例えば、左右中で15図柄ずつを持つパチンコ台で、
当り図柄が15種類の場合は、
表示上は15/(15×15×15)=225 ですので、
実際の当り確率の分母は225×0.9≦225×1.1
の範囲に入るようにという規定です。
202.5≦実際の当り確率≦247.5
計算すればこうなります。
ナナシーの場合、当初の表示図柄は3種類で、
当り図柄が9種類ですので、表示上の当り確率は
9/(3×3×3×3×3×3)=1/81
となります。
1/81では上限まで持っていても当り確率は1/89
にしか出来ず、当時としてはどうにもならない
ものでした。
この辺りも規定をよく読んでいない、
パチンコもしない開発者の弱点で、
古参の社員からはこの点を突かれました。
それで、下段の図柄に「黄7」を追加し、
当り図柄12種類、総図柄数1,728、表示上の
確率を1/144とし、実際の当り確率を
1/(144×1.1)=1/158
まで持っていき、何とか製品化することに
成功しました。
ナナシーの確率が1/158だったのには、
そういう理由があります。
始めから「黄7」が入っていたとしたら、
ネーミングも「ナナシー」ではなく、
「ナナナシー」になっていたはずです。
2021.10.29
製品化し、各都道府県の許可も取ったのに、
お蔵入りになってしまったのは、先回書きました
「確率が甘くて使い物にならない」
という内部意見からだったと思います。
多分、開発室内部だけではなく、営業サイドからも
そういう意見が寄せられたのでしょうから、私と
しては、その時点ではどうにも出来ませんでした。
ただ、神風が吹いたんですよね。
今もそうでしょうけど、ロングランで長期間
販売ということはなくて、3か月or4か月程度の
スパンでメーカーは新台の販売を行っていました。
たまたま新しい台の開発が遅れ、そのスパンに
空きが出てしまったんですね。
そこで、チャンスとばかりに当時の権限者に、
「ナナシーはいけると思います。
これを是非売ってください。」
としつこく伝えました。
多分、渋々だったんでしょうけど、背に腹は
変えられずに販売となり、これが10万台越えの
大ヒット。
渋々ですから部材が当初は十分に用意されて
おらず、間を置いては2次販売、更に間を置いて
3次販売と長期間売れ続けました。
結果、その間に次の販売機を十分に準備出来る
こととなりました。
もちろん、莫大な収益も獲得できました。
更には何度でもリメイク機が作られ、後々も
その会社を救うことになります。
ただ、功績は全部、表示担当者に行ったん
ですよね。
そこがその会社の今の会社の状況を作って
しまった根本的な部分なんでしょうけど。