「初代ナナシー」のが「全回転リーチ」は、見た目上、
当り図柄が揃った状態でずっと回り続けますので、
100%当り確定としたい所でした。
そうしないと、
「当り確定かと思ったらハズレたじゃねえか!」
というクレームを受けるのは分かり切っていた
と言えば、分かり切っていましたので。
でも、当時の監督官庁からの規定事項として
「図柄が完全に停止する前に、結果が100%
確定するのはNG。」
という条項があったんですね。
ですので、「全回転リーチ」はクレームを承知で
ハズレ付きで搭載するか、或いは、このリーチ自体の
搭載を止めるかの二者択一を迫られました。
まあ、ここまでの選択ではありませんでしたが、
熟慮した末に、第三の方法を取りました。
「全回転リーチ自体の出現率を極限まで低くし、
全回転リーチ自体、なかなか見ることの出来る人が
いないという形に。
その中で、1/256で外れるなら、ハズレを経験
する人は天文学的に少なくなるだろう。」
と。
それでも、「ハズレがある以上、それで売れなく
なる可能性がある」と主張する人もいましたし、
それが、当初にお蔵入りになった理由の1つでも
あったろうと思います。
また、表示担当者サイドからは
「そんなに出現率が低くちゃ、せっかく作ったのに
あまり見てもらえない。」
という不満の声もありました。
でも、予測はしていなかったけれど、これが
稼働を更に上げる要因の1つになったんですね。
発売から稼働絶好調で推移していたある時、
「ナナシーの全回転がハズレた!」
「そんなバカなことあるか!」
「ホントだわ!見間違えるわけねえじゃん。」
「俺も見た!」
「ウソ!そんなんある?」
という話が雑誌や、当時、利用され始めた
ばかりのネットに登場するようになり、むしろ
「全回転ハズレを1度でもいいから見てみたい」
と思われるようになり、それがステータスにも
なって、稼働が更に上がったんですよね。
まあ、これは全くの計算外でしたが。
2021.11.10
お蔵入りになるぐらい社内評価のひどかった
「ナナシー」ですが、いざ販売して大ヒット・
高稼働となると、コロッと態度の変わる人も続出。
まあ、よくあることです。
「横スクロールだからダメ」と言っていた方は
「あの役物は大ヒットした『ピカイチ天国』で
使っていた役物だから、縁起がよかった。」
と、さも自分のデザインした役物が良かったから
という言い方をし始めました。
彼は「勝負伝説」で保留予告の機密を外部に
漏らした人物でもあります。
そもそも、「ピカイチ天国」が大ヒットしたのは、
彼が責任者を務め、役物をデザインしたから
ではないです。
まず、あの時代に当時としては画期的にきれいな
カラー液晶と保留連チャンをセットにした企画が
外部からその会社に持ち込まれたことです。
そして、その採用を決定した先代社長の決断が
成功要因のほぼ全てです。
しくじれば倒産の可能性もあった莫大な投資で、
それ故に断った会社もあったろうと思いますが、
それに乗って勝負をした先代社長の英断です。
それを評価する声は聞かず、ゲージ担当者は
「ゲージが良かった」と言い、デザイナーは
「デザインがよかった」と。
また、「運の強さメーターが良かった」と考案者は
言いますが、あの機能を追随したメーカーはなく、
たいした効果はなかったでしょう。
入社したばかりの私はこの遊技機の認可を取る
ことでこの機種の開発に関わりましたが、
「僕の腕で保留連チャンもバレずに認可が取れた
から大ヒットにつながった。」
なんて、もちろん思ってはいませんし、言った
こともありません。
でも、保留連チャンの部分は、通すのに本当に
ヒヤヒヤでした。
保留連チャンは、ホールでの営業時に逮捕者が出る
メーカーも発生した禁断の果実でもありましたので。