ごるぴー商会:ロンリーウルフ篇①
クラブを逆さに持って素振りを3回,4回、
今度はグリップの方を握ってから
また素振りを3回,4回。
打つ前に毎回必ずこのルーチンを
済ませてからでないと、アドレスに入れない
おっさんがいたらしい。
「らしい」というのは、
その日私はそいつとは別の組だったので、
直接見ていないためである。
長ったらしい儀式が終わって
ようやく構えに入ったと思ったら、
今度は石像よろしく完全に固まってしまい、
なかなかティクバックに移る気配を見せない。
要するにこのおっさん、
超の付くスロープレーヤーで、
同伴者はジリジリしながら、堪忍袋の緒を
切らさぬようこらえるのに必死だったそうである。
しかもこの不届きな輩、
グリーン上ではボールとカップの向こう側を
何度も行ったり来たり。
パッティングに生活のすべてが懸かるプロの
選手じゃあるまいし、こうした行為は
時間がかかるので草ごるふぁ~の間ではご法度
であることを知らないのか?
おそらく本人は、自分がとんでもない
スロープレーを演じていて、そのために
同伴者のみならず、後続の組の人々にまで
多大な迷惑を与えている
という自覚をまったく持ち合わせていないのだろう。
また別の男の例では、
スタート前のティーグラウンドで形式的な挨拶を
済ませたあと、我々のキャディバッグの中身を
興味深げに覗き込むおっさん
がいた。
クラブの品定めでもしているのかと思ったら、
5番アイアンのフェース面とソール部分だけを
集中的に観察し、「ふふ~ん」とか言いながら
ニヤニヤしている。
どうやら、フェース面に付いているボール跡と
ソールの傷の付き具合を見て、我々の力量を
おぼろげに探ろうとしているらしい。
満足げにニヤついていたくらいだから、
「こいつらは大したことなさそうだ。」
との確信を得た気配である。
一般的なアマチュアごるふぁ~の場合、
アイアンで一番多く練習したがるのが5番である。
だからこの男はそれをじっくり穴があくほど
見たのだろうが、愚かな奴だ。
私はその頃、2年以上前から練習の時には
6番アイアンばかりを打っていて、
5番はほとんど打っていなかったのだ。
だから私の5番アイアンに付いている跡や傷は
だいぶ昔のもので、あまり参考にはならないはず。
そうとも知らずに勝手な思い込みをするとは、
おめでたい人だ。
横柄な態度でラウンドを消化し、
最終ホールのパットを沈めた直後、
このおやじがわめき立てた。
「ワッハッハ。公約通り40で回ったぞ!」
はて?、そんな公約、
まったく聞いた覚えがないぞ。
いつどこでそんな宣言をしたというのだろう?
我々に対して、ハーフ40のスコアを
自慢している様子がありありである。
私は、呆れてものも言えなかった。
私は以前、日常的にキャンセル待ちで
プレーする人のことを、ある意味うらやましいと
思ったことがある。
暇をもて余してごるふに明け暮れる日々に憧れ、
自分の腕前向上のためなら、他人の迷惑も顧みずに
知らない組に割って入れる図太さには妙に感心
したりもしていた。
経験のある人ならわかると思うが、同伴者が
知らない人ばかりだと、いくらごるふだといっても、
ちっとも楽しくないんだな。
それでも、これぐらいまでしてでもラウンド回数を
稼がなきゃ、上達はおぼつかないのかもしれないと
思ったりしたものだ。
しかし、ごるふの世界には、
「はぐれ狼(ローン・ウルフ)」
と呼ばれる人々がいるという。
周囲から嫌われ、ごるふがしたくても
一緒に付き合ってくれる人がいつの間にか
いなくなってしまった人のことである。
1人だけでのプレーはごるふ場側が受付けて
くれないから、やむなくキャンセル待ちでもして、
強引にどこかの組にもぐり込む以外に
ごるふをする術を失ってしまった人
の末路がキャンセルおやじの真の姿なのだ
と知った今、こういう人間にはなりたくないと
願うばかりである。
2018.4.18
貴方のゴルフ仲間の方々はあなたを変わらずに
誘ってくれていますか?
そうですか、よかったですね。
あなたはローン・ウルフではないようです。
一方、マンスリーなどに飛込みで入る場合は、
知らない方ばかりということが多いです。
それはそれで緊張感があって面白い
とは思いますし、クラブを超えた競技会では
まず知らない方ばかりで、楽しみ方もいろいろです。
それと、今では5番アイアンを入れていない人も
多くいます。時代の変化です。
最後に、平日休みの方々には友達と休みが合わず、
やむなく一人予約でお見えになられる方もいます。
一面で全てを語れません。
ただ、ゴルフ仲間を失ってしまった方は
いらっしゃるでしょうねえ、自業自得ですが。