昨日書かせて頂きました尊富士や新大関大ノ海の
活躍で「大尊(たいそん)時代の到来か」という話も
出ています。
「大尊(たいそん)時代」というのは、プロボクサー
だったマイク・タイソンになぞらえているんだろう
なあと思います。
マイク・タイソンは一世を風靡したヘビー級
ボクサーで、そのパワフルだったスタイルは
多くの人々の脳裏に未だ残っているでしょうし。
ただねえ、出足一気の押し相撲の二人が並んで
一時代を築くかというと、それは難しいんじゃない
かなあと思います。
仮に一瞬あったとしても、極めて短時間で終了に
なるような気がします。
だって、押し相撲の力士って強い時代の寿命が
短いんですよね。
出足一気で押し切れるだけの筋力がなくなると、
組み止められて手も足も出せずに負けるか、押して
すぐにはたくというパターンに陥りがちです。
近い例で言えば、引退した元大関の貴景勝関も
そうでした。
一気に押し出せなくなった晩年は、組まれちゃうと
どうにもならなかったし、はたいた結果、相手を
呼び込んでしまって押し出される場合も多かったです。
それは、私が見て来た中で最強の突き押し力士と
思う、現九重親方の元大関千代大海関がついに横綱
昇進できなかったことでも言えるような気がします。
彼の笑顔と取組時の負けん気の強さ剥き出しの表情は、
大好きでした。
が、千代大海のあれだけのパワーをもってしても
晩年は一気に押し出せず、組み止められての負けが
目立ちました。
出足一気で一時代を築いた力士というのは、私が
見てきた限りでは元横綱の柏戸しかいないような
気がします。
まだ幼かったので、見てはいたけどどのような特徴
の相撲だったのかはあまり判断がつかず、今調べて
みると右四つでも相撲が取れたと。
してみると、やっぱり「大尊(たいそん)時代」には、
懐疑的になっちゃうんですよね。
2024.11.23
出足一気の相撲しだけで横綱に上り詰めた力士は
そこそこにいると思います。
一突き半→一月半→45日という洒落から「四十五日の
鉄砲」と言われた横綱太刀山は突き押し相撲であり、
それで一時代を築いたそうです。
ただ、当時は土俵のサイズが今よりも小さかった
ため、それが可能だったのではないかと思います。
現在でも、土俵が小さければ突き押しの阿炎などは
非常に有利になるでしょうし。
元横綱の曙もそうです。
言って見ればパワーだけでした。
でも、近代において一時代を築いた大横綱と呼ばれる
力士に突き押しのみという力士はいないです。
実際に見てきた限り、優勝回数で大横綱を判断すれ
ば、大鵬、輪島、北の湖、千代の富士、貴乃花、
朝青龍、白鵬で、出足一気のみの力士はいないです。
まあ、突き押し相撲は、パワーのみに特化して強化
すれば、手っ取り早く出世できるんだろうと思います。
でも、その強さには奥行きがあまりない。
一方で、恐らく四つ相撲って手っ取り早く上手くなら
ないし、それを選択せざるを得なかったということは
元々、必ずしも体格に恵まれていたわけでもない。
でも、そういう力士の中から大横綱が出ますし、力士
寿命も長い傾向があります。
ですので、大ノ海・尊富士の今の状態を見る限り、
とても「大尊(たいそん)時代」がなんて思えないん
ですね。
元は突き押しだった玉鷲のように徐々にそれだけじゃ
ないというようになればばまだわかりませんが。